扉の向こうは江戸時代「中山道」広重美術館 秋季特別企画展(後期1)


さて、今回は、秋季特別企画展の最終回にあたる③後期「中津川~大津」です。

 

現在で言うところの「岐阜県中津川市~滋賀県大津市」のエリアになります。

 

地元の宿場まちが続くので、より一層親しみを覚えました。

 

初めて此の地を訪れたのは、9月の中旬だったこともあり、日中は汗ばむ陽気が残っていましたが、季節はすっかり冬となりました。

 

平日ということもあり、ラストはゆっくりと鑑賞することができました。

 

お客さんは日本人が数名で、2:8くらいの割合で外国人が多かった印象です。

 

浮世絵版画は、十九世紀後半の西洋絵画に影響を与えたことが知られています。

 

なかでもゴッホの浮世絵に対する関心は高く、歌川広重の作品『名所江戸百景』の「大はしあたけの夕立」と「亀戸梅屋舗」

そして、渓斎栄泉の作品「雲龍打掛の花魁」を模写しています。

 

ゴッホが魅せられた特異な構図の模写は、海外でも広く知られており、現在でも国内外で高い人気を博す浮世絵師でもあります。

 

館内のビデオ放映の言語は、英語になっていました。

 

1階の展示室に入ると、一番最初に展示されていたのは「46.中津川」でした。

 

中山道六拾九次之内では唯一、二種の版が存在しています。

 

「雨の景色」は、残存数が極めて少なく希少であり、なんらかの事情で描き変えられた別図が多く残っているようです。

 


■二人の浮世絵師

 

・渓斎栄泉:寛政三年(1791年)~嘉永元年(1848年)

 

 江戸の下級武士の子として生まれる。幼少期は狩野白桂斎に絵を学ぶ。その後、文化七年(1810年)頃、菊川英山に弟子入りし、文化末頃から作画活動を開始する。文政五年(1822年)頃から美人大首絵を盛んに手掛け、美人画・春画の名手として知られるようになる。

 

・歌川広重:寛政九年(1797年)~安政五年(1858年)

 

 江戸の定火消同心の子として生まれる。文化八年(1811年)頃、歌川豊広に入門。最初期は役者絵を手掛け、やがて美人画に転向する。豊広没後は主に風景画を制作し、天保二年(1831年)頃刊行の川口屋正蔵版「東都名所」(一幽斎がき東都名所)で好評を得る。その後、天保四年(1833年)頃から「東海道五十三次之内」(保永堂版東海道)を手掛け、風景画の名手としての地位を確かなものとする。

 


 

◆秋季特別企画展

 

 出版190年記念 渓斎栄泉・歌川広重

 木曽海道六拾九次之内

 摺り違いの愉しみ

 

 ①前期:2025年8月28日~9月28日 日本橋~追分

 ②中期:2025年10月2日~11月3日 小田井~落合

 ③後期:2025年11月7日~12月7日 中津川~大津

 

 3期全点入れ替え

 18年ぶり全点公開&徹底比較

 


 

■中山道広重美術館

 

円熟期の広重が中山道を描いた「木曽海道六拾九次之内」など、浮世絵版画を中心に収蔵しており、ほぼ毎月入れ替え展示。模擬版木を使った重ね摺り体験も人気。

 

午前9時30分~午後5時(入館は4時30分まで)


 

木曽海道「中津川宿」は、図柄の異なる二種の版が存在します。

 

署名「広重画」の書体の違いから「雨の中津川」と呼ばれる(46-1)がより早期の作画であり、もう一方の作画(46-2)は、後摺りまたは異版に該当します。

 

■木曽海道 中津川宿

 

美濃国 現・岐阜県中津川市

人口:928 総家:228

本陣:1 脇本陣:1 旅籠屋:29

 


■歌川 広重 作 木曽海道六拾九次之内 雨の中津川(46-1)

 

宿場まちを西に出発し、中津川を渡った先にある駒場(こまんば)辺りの景色とされています。

 

■駒場村(岐阜県恵那郡に存在した村)

・中津川市駒場町

 


■歌川 広重 作 木曽海道六拾九次之内 中津川(46-2)

 

こちらは、宿場まちの西側を流れる中津川から宿場まち方面を望んでいます。

 


 

「雨の中津川」

 

木曽海道を行き交う旅人たちの姿が白雨に煙っています。

 

雨脚の線彫は白黒二版の墨色があり、胡粉(白色顔料)入りの墨の版と、墨の版で雨脚が表現されています。

雨脚には色の違いと彫の強弱が付けてあり、雨脚が細いところ、ふくらみを持たせたところがあります。

まるで雨が生きているように感じられますね。

 

地に近づくほど線彫が太くなり、大粒の雨が地面を叩きつけようとしているのか、雨音さえも聞こえてきそうです。

 

夕空の表情を見せる淡い色のぼかし。

地面の淡い色調から濃い色調への色分けの変化。

 

天と地を濃い色で引き締めて、真ん中が遠くまで抜けるような明るさで夕空を表現し、遠方の山影である恵那山はシルエットをくっきりとさせています。

 

黒雲からまっすぐに降る白雨(はくう)は夏の夕方に降り出した、にわか雨でしょうか。

 

果たして短時間で止むのでしょうか。

 

このあと涼しい風が吹くのでしょうか。

 

合羽を羽織って宿場まちを出発し、次の目的地を目指そうとする三人の旅人。

 

水面で静かに羽を休める一羽の白鷺。

 

その奥にいるもう一羽の白鷺は飛び立とうとしているのか。

 

広重の描く風景画が高いリアリティーを持つ要因の一つに、さまざまな遠近法を駆使した空間の奥行き表現が挙げられますが、さらに雨の版が重なることによって、空間ばかりでなく、時間の表現も加わっていきます。

 

雨の味というのか・・・

夕立の感じというのか・・・

 

まるで現代のカメラで撮ったかのような一瞬の情景が収められており、構図の中に時間的な変化を含み込ませています。

 

この臨場感豊かな表現が、なんともいえない旅愁を醸し出しています。

 


旅のはじまりはモーターサイクル。

 

自由への扉をひらこう。