記憶にのこるワインディング「日本国道最高地点」


『志賀草津道路』国道292号は、長野県の志賀高原と群馬県の草津温泉を結ぶルートである。

 

県境の渋峠付近には「日本国道最高地点」標高2172mの石碑が建っている。

 

 

<志賀草津道路>

・区間距離:約50km

・通行料金:無料

・標高  :国道最高地点 2172m

・冬季閉鎖:11月14日くらい~4月下旬(閉鎖前でも降雪や路面凍結あり)

 

 

日本屈指の山岳ドライブルート。

変化に富んだ景色が楽しめることで、ライダーにとても人気のあるルートである。

 

全長約50kmのスカイラインは信号機がひとつもない大自然の中を駆け抜ける快走路。

 

春から夏、そして秋にかけてはツーリングやドライブでワインディングを楽しみ、キャンプを満喫し、渋・湯田中温泉,信州高山温泉郷,草津温泉の名湯を巡る。

冬には志賀高原や草津温泉の雪山でボードを楽しむという、一年を通じて遊び回ることができる広大なエリアである。

 


かつて、バイクで走ることのできた"日本最高地点"といえば、岐阜県の『乗鞍スカイライン』であった。

 

であった・・・と過去形なのは、もう走ることができないのだ。

 

残念なことに『乗鞍スカイライン』は2003年5月にマイカー乗り入れが禁止となってしまった。

 

ここをバイクで走ったのは、乗り入れ禁止となる5年前の1998年9月のこと。

大学卒業後、友人と一緒に走ったのが最後の走りとなってしまった。

その当時のマシンは、2ストロークエンジンで乾式クラッチのTZR250RSだった。

 

その標高は何と、2702m!

現在のマイカーで走ることのできる『志賀草津道路』の「日本国道最高地点 2172m」よりも更に530mも高かったのだ。

 

平湯峠(標高1684m)を起点とし、終点の畳平(標高2702m)を結ぶ、延長14.4kmの山岳観光道路。まさに日本一の高度を走ることのできた雲上のスカイラインだった!

 

もともとは軍用道路で、1941年に陸軍航空本部が航空エンジンの高地実験施設を乗鞍岳畳平に建設するために造られた道路であった。

 

真っ青な天空が異様に近かったことを今でも覚えている。

 


 

標高2000m級の高所を走る『志賀草津道路』では、眼下に雲が広がる光景が随所で見られる。

 

まさに雲上のスカイラインである。

 

いま現在のマシンはインジェクション車なのでパワーロスも何も感じさせないのだが、かつて乗っていたFCR39φ仕様のキャブ車では、パワーロスが右手から伝わってきた。

いわゆる"カブリ"という現象だ。

 

高度が増すほど上方にある空気が減るため気圧が下がっていく。

また気圧が下がっていくため空気も薄くなり、空気中の酸素の量も減っていく。

地上付近の約1.0気圧でセッティングを出していたアナログ的なキャブレターは、標高2000m付近の約0.8気圧では燃調が狂ってしまうのだ。

アクセル全開時のガソリンエンジンの空燃比(A/F)は、12.9~13:1がもっともパワーが出ると言われている。

 

話しは脱線するが、大日本帝国海軍が十二試艦戦(ゼロ戦)の計画要求書をメーカーに出した内容は「上昇力は高度3000mまで3分30秒以内、航続力は正規状態、高度3000mにおいて公称馬力で1.2時間ないし1.5時間、巡行で6時間以上」とあった。

 

ゼロ戦は迎撃戦闘機として高い高度まで急速に上昇できねばならないが、通常の燃料供給装置では、気圧が急激に低下するため、燃料がタンク内で気化して、エンジンへの供給が途切れてしまう。そのためタンク内の燃料を加圧する特殊ポンプを三菱電機が開発した。

燃料と空気の混合気の割合は1:8~18くらいが効率よく燃焼できるのだが、高高度では空気が希薄になるのに対し、燃料は一定量が供給されてしまうため、混合気の濃度が濃すぎてエンジンが不調になった。

そこで過給器(スーパーチャージャー)を装備して、希薄な空気を圧縮して送り込むようにした。

過給器は中高度と高高度の二段に切り替えられた。

中島「栄」二一型エンジンは、離昇出力では1130馬力あるが、高度2850mの第一速過給高度で1100馬力となり、高度6000mの第二速過給高度では980馬力に低下する。

しかし、過給器が無い場合、高度6000mでは481馬力まで低下してしまうのであった。

 

零式三二型の性能は、高度6000mまでの上昇時間は7分19秒、実用上昇限度は11050m、最高速度は時速544.5km、航続力は2378km、燃料搭載量は正規状態で500リットルであった。

 

航空エンジンの高地実験施設が乗鞍岳の畳平(標高2702m)にあったのも納得してしまう。

 


■横手山ドライブイン

 

日本離れした山岳ムードを楽しめるなかに、横手山ドライブインがある。

 

スノーシェッドに山小屋

彼方に臨むアルプスの山々

 

眼前に広がる雄大な光景に圧倒される。

 

 

下界を見下ろせば、まるでジオラマのような別世界が広がっている。

 

荒涼とした岩肌

柔らかな草原

 

鋭く尖った針葉樹林

やさしい風

 

 

青空に浮かんだ真っ白な雲が、自分の目線の高さにくるのが何とも不思議な感覚だ。

 

透明度の高い新鮮な空気を吸い込み、深呼吸をする。

 

何度も訪れたくなる魅力のひとつに、この空の近さがある。

 


 

稜線をうねりゆくスカイライン

 

コーナーを抜けるたびにダイナミックに変化していく景色に感動しながらアクセルを開けていきたい。



山田峠を越えてから、万座高原・万座温泉を経由する「上信スカイライン」(県道466号線)を走り抜け、県道112号線から「毛無峠」に向かいます。


『志賀草津道路』のツーリングを満喫したあとは、近くのキャンプ場で宿泊します。

 

■ヤマボクキャンプ場(YAMABOKUグリーンサイト)


『志賀草津道路』からアクセスできるキャンプ場

 

■カヤの平高原キャンプ場


旅のはじまりはモーターサイクル。

 

自由への扉をひらこう。