大型自動二輪教習の思い出


大学4年生の冬、親友からの説得もあり、自動車学校に行くことになった。

実は、住んでいたマンションから歩いて行けるくらい近かったのだ。

バイト先の本屋を通り過ぎると、すぐそこは車校だった。


 1996年に「大型自動二輪免許」を教習所で取得できるように法改正の動きがあった。

但し、行政側は一定の条件を付けた。

その条件とは、大型自動二輪教習の公認を受けたい自動車学校は、その自動車学校内で教習生に大型自動二輪の練習をさせた後、免許センターで限定解除試験を受けさせて、その自動車学校出身の合格者が連続10人であること・・・だった。


ひとまず、教習生の応募だけはしておいた。

 

が、しかし連絡はこなかった。

(理由は何となく分かっていた・・・)

 

どのくらいの期間が空いたのだろうか?

再び、車校側から連絡があった。

一度来校して欲しいと・・・

 

ある寒い冬の夜、自動車学校の一番奥にある二輪車教習所に案内された。

 

とても冷たい雨が降っており、街路灯で照らされた路面は濡れて黒く光っていた。

教官から目の前にあったHONDAのCB750に乗車するようにと言われた。

 

人生初の大型バイクである。

レーサーレプリカしか乗ったことがなかったので、とんでもなく乗りにくく、そして重たかった。

 

それにブランクもあった。

バイク事故の記憶もフラッシュバックし、膝はガクガクと震え始めた。

 

教習生としての採用条件は、実技試験のみで筆記試験はナシ。

実技試験は至って単純だった。

HONDAのCB750を乗りこなせるかどうか?

たったこれだけだ。

 

その見極めは、坂道発進のところで行われた。

8の字旋回が出来るか否かだ。

 

つまり、夜のウエット路面でハンドルフルロックターンをやる。

下りの勾配で旋回し、戻ってきて上りの勾配で再び旋回をやる。

そして均等な円の大きさで8の字を繰り返し描き続ける。

そいつを両方の斜面で、右旋回と左旋回の両パターンをやるように指示された。

 

マジかよ!?という感じだ。

Uターンなんて普段は右にしかしない。公道は左側通行だからだ。

しかも下り勾配と上り勾配の両斜面だなんてレベルが高い。

ましてやこの真冬のウエット路面の上に、路温もタイヤも低温ときた。

 

言われるがまま、教官の前でぶっつけ本番の見極めが始まった。

 

バイク事故以来の二輪車、教官の鋭い視線、いろいろな恐怖が重なり身体が強張ってブルブルと震えまくった。

 

とても不恰好だったが、何とか転倒せずに8の字旋回することが出来た。

 

教官と一緒に教習所に戻ると、

ヨシ合格!と言われた。

 

明日から好きな曜日の好きな時間に来て、好きなだけバイクに乗ってヨシ!

大型教習車両はCB750、コースも無く、メニューも無く、とにかく乗って乗って乗りまくれ!

手付金として先に3万円頂くが、合格の暁には3万円をお祝い金で渡す。

頑張れよ!と言われた。

 

翌日から猛特訓が始まった。

 

・7秒以内のスラロームは3秒以内をキープすること。

・11秒以上の一本橋は30秒以上キープすること。

・進入30kmからの急制動は60kmから進入すること。

・S字とクランクはバンクさせずにハンドル操作でクリアすること。

・減速で使うリアブレーキを無くしても車速をコントロールできるようにすること。

・ハンドルフルロックターンから更にバンクさせ最小回転半径を小さくさせること。

・車体をパイロンに絶対接触させないこと。

 

ジムカーナのように教習所のあらゆるコースを高速で駆け巡った。

反射神経を高めるため旗の動きに合わせた危険回避訓練。

教官を後ろに乗せての二名乗車でのコース走行。

 

来る日も来る日も、とにかくCB750に乗り続けた。

晴れの日も雨の日も、昼間も夜間も、多い日は1日8時間近く乗車した。

 

そのうちバイク事故の恐怖心はどこかに消えてしまい、二輪車をコントロールする楽しさが込み上げてきた。

 

車校が公安委員会の認定を受ける条件は、試験所で連続10人の合格者を輩出することだった。

連続10人合格させるだけの実力が教官に備わっているか?が問われるらしい。

そんな訳で、自分だけでなく教習生の皆で協力しあってお互い技を競いあった。

 

時には県警の白バイ隊員も車校にやってきた。

練習車両はとても乗りやすいCB750だったが、試験車両はVFR750だった。

 

そう、VFR750とは現役白バイ隊員が使っていた車両だ。

当時からV型の4スト四気筒エンジンは低速トルクの処理が苦手だった。

 

限定解除試験が近づいてくるとVFR750で練習することになった。

こんな乗りにくいVFR750を白バイ隊員は、教習所の中をまるで自転車のようにクルクルと乗りこなしていた。

あれには本当に参ったし何と言っても驚いた。レベルが違いすぎる・・・。

 

免許センターでの試験当日、教官から制服を借りた。

まるで白バイ隊員が全国大会に出場するような白い制服だ。

 

緊張が高まる。

 

まず始めに、免許センターの裏で地面に寝転んでいるVFRを引き起こし、手押しのまま8の字を描くように指示された。

難無くクリアー。

乗車時間は何時間なの?の質問に、150時間近くと答えたら納得してくれた。

通常は100時間は必要とのことだった。

 

いよいよ本コースに出ることになった。

車校の皆に送り出される。

後方確認を済ませ、大きな声で"乗車します!"とVFRに乗り込んだ。

交差点等での左右確認が誇張しすぎであるとの指摘を受けたが、晴れて合格だった。

 

バイク事故の克服、二輪技術の向上、大型自動二輪免許の取得、教官との出会い、仲間たちとの団結力。

 

大学卒業を目前にして、大学以外でとても多くのことを経験することが出来た。

 

「大型自動二輪免許」の取得に強く背中を押してくれた親友に感謝である!

 

ありがとう!


旅のはじまりはモーターサイクル。

 

自由への扉をひらこう。